情緒的出勤の風景

自転車通学の女子高生が風に膨らむスカートを懸命に手で押さえながら走って行った。あの高校は確か今年からジェンダーレス制服が取り入れられてるはずなのに。それでもやっぱりスカートを好む女の子もたくさんいるんだろう。

走る車の助手席の窓を風に吹かれた落ち葉が打つ。幾つも幾つも、かさこそ音を立てては打つ。赤や黄色や茶色や緑。秋の終わりの低い朝陽と斜めに吹く風に翻って光る枯れ葉は意外ときれい。

細い道を抜けた先に広がる運河の水が風にさざめいてキラキラわたしを眩しくさせるのはいつの時も同じだけど、なぜかこの季節の水のきらめきは心の大切な部分をしんとさせる。苦しいみたいにしんとさせる。とても冷たい。

地べたに落ちた茶色の枯れ葉が、低い風にからころ転がって、わたしの乗る車の前を走って行った。ほらこっちだよ。早く走って。ひとりぼっちのわたしに枯れ葉だけが優しく。