2004-11-01から1ヶ月間の記事一覧

いっそぼうぼう焼けちゃえばいい

帰り道、駅前のパチンコ店。切れかけたネオン管が死に損ないの冬の蝉みたいにジジジジ貧乏臭い音をたててた。工事のせいで狭くなった舗道を自転車に乗った女子高生達がわたしをひき殺したいみたいに少しもスピードを緩めずに走り抜けてく。駅へ通じるデッキ…

しいたけ的わたし

しいたけ的休日。リラックスしすぎて時々思わずかさが開いちゃう。かさが開くと胞子が飛んじゃう。飛んでった胞子たち、どこか適度な温度の水分と栄養分の整った環境を見つけてしっかり生きていくんだぞ。こっそり応援。 ネットウインドウショッピングにも飽…

朝電話でそう言った

ハムスターが死んだ。朝電話で母がそう言った。今日の朝起きてみたらもう死んでいた。そういえば最近あまり餌を食べなかったと、母がそう言った。 仕事が終わってからあの子と一緒に母の家に行く。車の中であの子にハムスターが死んでしまったことを伝える。…

はたらく

なんだか今日の空はいろんな形の雲が入り乱れてて不思議な空だなってコピーをしながらこっそりブラインドを揺らして窓の外をのぞいてみる。交差点に面して斜めに切られたビルの角から道を見下ろす。デパートの紙袋を提げて舗道を行く人。小走りに横断歩道を…

指差してあの子に教える

夕焼け空が好きなのはなんだか紅いから遠いから何かの終わりでなにかのはじまりだからちょっと寂しくてそれから後でわくわくしてくるからあの夕焼けの際の向こうの世界の裏側は朝やけなのかなって思うから。夕焼けの次にやってくる夜は銀色だから。 月を見る…

陽のあたる部屋

暖かいななんて思いながらころんと転がってそのままうとうとしたり伸びをしたり足の裏のマッサージをしたり。誰からも思い出されずすっかり忘れられたまま、何の用事もなく行くべきところもなく積もり積もった雑事もすっかり反故にして電話もドアフォンもた…

幸せになってゆくたびに

まるで一人分みたいに見える小さなケーキの箱をもって横断歩道の信号が変わるのを待つ夕暮れ。こうしていつだってこれでよかったのかなって少し足元を見る後ろを振り向くきっとこれからずっとそう。幸せになってゆくたびに何か残してきたものを犠牲にしてき…

きっといろんなものを見落としている。そう思うレンタルビデオ店帰りの日曜、朝の車窓。信号でとまった時前に伸びる港へと続く道路の微かな湾曲の具合とかずらりと並んで永遠のふりをしてる街灯のかもし出す数学的ロマンとか。 少し時間を速くまわしすぎてる…

土曜日。明日は日曜日

「こんにちわ。あなたの日記を読んでるうちになんだかとてもほかほかの肉まんが食べたくなってしまいました。どうしてといわれてもあまりうまく説明できないのですが、二行目の最初の『なんだか、そんな気がしたのです。』という部分の句読点の具合がそう思…

おおむねはとむね

駅。駅前の広場で鳩の群れを見る。 鳩。灰色の土鳩のなかに一羽だけの白く綺麗な鳩。 美。集団の中でぬきんでて美しいというのはそれはそれでつらいことなのだろう。想像。 自己の美という矜持に対峙し続けてゆくのは鳩だって並大抵なことじゃないに違いない…

ハッピーエンド

帰りの車の中あの子が今日の観劇会のお話をしてくれる。なんだかよくわからない。でももちろん最後はめでたしめでたし。 「そうかじゃぁハッピーエンドだったんだね」って言ったら「なに?ハッピーエンドって」 「うーん、ハッピーエンドってね、悲しい終わり…

おかえりなさい

ずる休みして家でごろごろしてたら彼女からメールが来た。小さな女の子がうれしそうに息を切らしてかけてきたように踊る文面。そこには遠い異国の青い空や綺麗な海の色がそのまんままだ彼女の周りに特別な空気として巻きついているみたいで、つるんとして素…

遊園地

遊びつかれてホットカーペットの上にごろんと横になってチュッパチャップスなんか舐めながらテレビを見てるあの子の横に、「ねぇ隣に寝転がっていい?お母さんもなんだか疲れちゃった。」って一緒にごろんとする。それからそっと額をあの子の頭にくっつける…

風邪

風邪ひいちゃった風邪。先週だって熱を出して体中痛くてご飯も食べられなくなっちゃったばかりなのに、どうしてこうも毎週毎週風邪ひいちゃうんだろうね。なんだか喉まで胃液が上がってきてるみたいに苦くて気持ちが悪くてああもうやだ。ばたりとホットカー…

艶かしい翡翠の色を噛む

葡萄色の闇に包み込まれ始めた世界の片隅に、もう色褪せた夕焼け紅のかけらが未練たらしくはりついていた。だけどそれだって時計の秒針があと数周まわる頃には剥がれ落ちてしまうに違いない。世界が静かに闇の方向へと回転を始める。 もうとっくに沈んでいっ…

だれる

野良の癖に妙に毛をふさふささせた三毛猫模様のまだ若い猫が一匹駐車場の片隅の陽だまりで横座りして太陽光線からエネルギーを充電してた。今年はファーが流行だから猫だって流行には無関心じゃいられないのよ。何言ってんの、最近の猫はチンチラを被ってる…

古い日記

かちっと音をたててクリックすると古い日記が次々に呼び出されてきて、それを随分いとおしげに読む自分を多少は馬鹿げてるようにも思うのだけれど、それはそれで確かにかつてそこにあったわたしで、わたしの濃密な思念で、たとえ芋虫の夢のようにどろどろで…

しいの実

テーブルの上に昨日あの子が神社で拾ったしいの実がいっぱい転がってる。 「拾っていってもいいけどそれ食べるの?そのしいの実は食べられないよ。こっちの木のしいの実には実がない。すぐ隣の木のしいの実のほうなら実が入ってるから食べられる。」 夢中に…