2006-01-01から1年間の記事一覧

鳩死に 魚の目は泪

朝陽に白んだアスファルトの路面に車に押しつぶされた鳩らしきものの死骸がプレスされた海老せんべいみたいにぴったりとはりついている素敵な朝、かろうじてプレスを免れた片方の羽だけが、まるでアスファルトの路面から生えているかのように垂直に立ち、時…

僕がまだパーティーって言えなかった頃

クリスマスの日に死んじゃうなんてなんかスターだよなって思う。最敬礼しつつ本日一缶目の発泡酒のプルトップをぷしゅっとひいて唱える。ゲロッパ!ついでにグッチ裕三のためにも唱えてみる。ゲロッパ! 諸般の事情により今日がわたしんちのクリスマスパーキ…

シャッターはウィンク、シャッターはキス。

アルバムの中のちびっ子の時代のあの子はどれもこれもうっとりするくらいに可愛らしくって綺麗。一体どうしてあの子はこんなにも可愛らしく幸せそうな瞳でカメラを見つめることができるのかなって不思議に思いながらべったり床に座り込んでページを繰り続け…

不条理を前にした武士道ということ

たそがれ清兵衛もカミュもカフカも案外根っこは同じなのかもしれない。ご家老だとか藩命だとか、戦争だとかペストだとか、大きな虫だとか理解不能な裁判だとか。日本人が本能的に好み、欧米人がイメージとして憧れる武士道というのは、そういった不条理を前…

三半規管上のかたつむり

わたし右耳の後ろには小さなスイッチが取り付けられていて、それはとても秘密なことなのだけれど、実は三半規管をかたつむりにこっそり変えるスイッチなんです。そうしてそれがほんの時折勝手に切り替わり、すっかり三半規管のあたりがぬめぬめしてあんまり…

鼻先に鼻歌を

12月14日木曜日曇りのち雨雨雨。それでもいつも心に太陽を鼻先に鼻歌を。今日の鼻歌はドラゴンクエスト。今更ながら最近妙に待斬内蔵が気にかかる。彼は誰か?かはたれか?夕暮れ時往来を向こうからやってくる人の顔が見えにくくなる。そんな時彼は誰か?と…

反省

日曜日は何日かぶりに晴れたので此処を先途とばかりに家中のありとあらゆるものを引っぺがし、いそいそと洗濯機に投げ入れ、ぐるぐる回し、はたはたとベランダに干し上げて、ああいけない布団も毛布も枕も干さなくっちゃついでにあの子の大好きなペンギンの…

マネキンの首

階段を降りようとしたら頭だけのマネキンがわたしの髪を引っ張るから「ねぇそういうことはやめて」って言いながら振り向く。マネキンは話せない。だからわたしは「寂しいの?寂しいならまばたきをしてみせて」って言ってみる。マネキンは懸命にまばたきをし…

情緒

なんだか悲しくてやるせないような気がして仕方なくてそれはどうしてなんだろうって考えながら掃除機でダイニングテーブルの下をがぁがぁ吸ってたら少しだけ涙が滲んできた。こういうのって生理のせいに違いないってわかっていてもそれでもだめ。生理の時わ…

持ち上げる

どんなヘビメタにも負けないくらい重たい日のマイプレスは超ウルトラ重たいんだよねふんだ。なんてちっとも進まない画面にうんざりしながらちょっとぶちぶちぷち文句。 あのさぁガソリンスタンドの帰り道、メッシュになった黒い雲の隙間からまだ微かに昇り際…

さよなら

この子はなんて澄んだ綺麗な目をした男の子なんだろうってそう思う。わたしの名前を呼びかける静かな声のトーンがとても不思議だと思う。それでわたしはどうしてあげたらいいのかなってそう思う。そう思ってもどう思っても結局よくわからなくってそれでもう…

屁こいた

あの子と二人お風呂に入っていつもみたいにいろいろくだらない遊びをしてたらあの子のお尻のあたりからぷくぷくぷくって泡が出てくるから思わずおかしくなっちゃってそれでわざと大きな声であー屁こいた屁こいくさあいくさあいってからかって、そしたらあの…

この世に生まれてきた以上

たくさんの子供たちの中から探し出したあの子の可愛らしい顔をずっとズームで追いかけて撮影してて少しだって油断したらすぐにカメラがぶれてあの子の姿を見失っちゃうからそれだから手だってちっとも動かせないし子画面から目だってそらせられないなのにそ…

ウインドウズ95

曇天時々恋愛まじり時雨かけるけど時雨れない、そういう感じをキープ。微妙なバランスを保つのが上手?じゃなくてバランスを崩すのが下手なのかも。暮れかけた空の中に少しの青空を見つけて驚く。夜の空は群青色じゃないんだよ。本当は普通に青空、昼間と同…

テュリャ

職務上知りえた秘密に驚く。ががびーん。いつも自分のことにばっかり一所懸命でいるからついつい誰にもそれぞれの人生があるんだってことを忘れてしまうのが人の悲しいSEGAじゃなくて佐賀でもなくて性。だけれど何だかそれをリアルに感じた今日という日。少…

エコだよエコ

眠れない。ゆっくり羊を数えてみる。羊が一匹、羊が二匹、羊が三匹。そうしてやがて羊はくるくる回り始めくるくる回って回りすぎてもう一体何匹いるのか数えることすらできなくなっていく。 午前二時。 「眠れないの?」あの子の気配に問いかける。「うん眠…

賢い猿

どこかから賢い猿がやって来て教えてくれるといい。 その夜、猿の代わりに雷がどしゃぶりの雨をつれてやって来た。 北西の空、灰色の雲の上の稲光。ピカッと光った瞬間ほんの少しだけ灰色の雲の中身までが透けて見える。耳をつんざく大音響と凄まじい閃光が…

マナーでしょ

ずいぶんたくさんの強い雨粒が窓を打ちずいぶんたくさんの雷鳴が響いたのでそれでわたしの心はすっかり悲しくさめざめとしてしまいもうこの入り組んだパワーポイントの図表のことなんかどうでもいい何もかもをふいにしてもかまわない、あの子のいる学校へと…

きつねこ

Firefoxのテーマを本日 「Red Cats 猫がいっぱい」に変更。分度器の次に猫が好きなわたしとしては、分度器の次にこのテーマを気に入っています。戻るの猫も更新の猫も中止の猫もホームの猫も履歴の猫もどの猫もこの猫もことごとくお尻を向けてるのがいい。猫…

ひとりごとのキッチン

連休二日目の朝、眠りこけて油断している間にすっかり溶解しきったわたしの精髄と、ベッドにだれっと横たわるわたしらしきものの形骸との間にすっかり冷め切った夫婦のごとき埋めがたい隙間が生じていたようなのだった。 ふぅ、それでしばらく起きられなかっ…

窓をしめる

空想の世界にしかいないような異形の生き物が、器用に吊り下げてた紐をばちって鋏で切ったみたいにどこかからこの世界に黄昏が降ってくる。闇が落ちかかる。うっかりあそこの交差点で左折してしまったらトワイライトゾーンみたいにきっとおかしな世界に組み…

苺ジャム製バーコード

コーヒーを飲みながら、わたしはカオリに夢の話をしてみた。カオリは、まだ眠いのか面倒くさそうにコーヒーをすすりながら言った。 「何度でも見る夢なら、わたしにもあるよ。なんかドグラマグラみたいな感じの、いやに毒々しい田舎の山道みたいな景色で、で…

鬱屈としたミルフィーユ

それにしたってわたしはこの同じ夢をいったい何度見ているんだろう。どうしてこんなにも何度も同じ夢を見るんだろう。悪夢にも近いこの夢はいつもどろどろとした眠りとともにやってきて、少し紗のかかったレンズを通して見たような異様な原色に彩られている…

二酸化炭素の日曜日

それからソファの上に仰向けに寝そべると、お腹の上に両方の手を乗せ筋肉の動きを手のひらに感じながら「ふぅっ」と天井に向かって息を吐く。こうして腹式呼吸をしながら息と一緒にお腹のそこに溜まっていたものを吐き出すとなんだか何かに一区切りつけられ…

蜆とあさり

蜆はどちらかというと人が、というか貝がいいので水につけた途端口をあけ、自らの身体の一部をだら~んと貝の隙間からのぞかせビラビラと水の中を漂わせて全く馬鹿のようなのだけれど、それに比べてあさりはひどく疑り深い性質で塩水につけても容易には口を…

メール

わたしは元気。こんなことあるとちょっとへこむけどね。いつ会えなくなるかわからないね。生きててもこの先会うこともなかったかもしれないけど、まさかあの子のお通夜に行くとは思わなかった。なんだか生きるモチベーションが低いわたしが生きてて申し訳な…

三半規管上のロッドスチュワート

三半規管のちょうどくるると巻いたあたりで朝からずっとロッドスチュワートがしゃがれ声で歌い続けてる。タイトルすら思い出せない曲のサビの部分を延々と。そうしてそのうちにそのしゃがれ声はいつの間にか搾り出すようにサマータイムの最初の部分を歌いだ…

フルーツグラノーラ

曇り空の片隅のほんの少しの雲の切れ間に、微かな水色の空を見つけたのだけれどそれが希望なのか虚無なのかよくわからないのでわからないままにしておく。どうせすぐに忘れてしまう。 チキンスープがお腹を暖めてくれるからそんなには不幸じゃない。スープの…

ベクトルは同方向

一日の三分の一くらいは微生物のことを考えて生きてる女の子っていうのが世の中には意外にたくさんいるんだってこと。それが最近の発見。 冷凍庫を掃除したついでに取り出した保冷剤が融けだしてばきばき音をたてる。一年くらい前からずっとポケットの片隅で…

のどみみずきん

喉をやられた耳も痛い。そうかそうだったのか喉と耳は宿主のわたしをこっそり裏切り不義密通のうえかくも恐ろしき策略陰謀をめぐらせ純真なるわたしのピンク色の細胞を攻撃せしめんとあの悪名高き風邪ウィルスをこっそりわたしの体の中に招きいれたのだそう…