2003-01-01から1年間の記事一覧
全部ちゃらにしてまたあたらしく回りなおし。一張羅の燕尾服を着込んだハムスターの管理人が張り切って一年分のねじを世界中のメリーゴーランドを使ってぎりぎりぎりぎり巻いている。途中でねじがきれちゃわないように。 せっかく回ったのに、なんて青い地球…
車を降りるといつだってあの子とわたしの手は自然にくっついちゃう。きっと便利なように神様が磁石にしておいてくれたんだ。 愛情?違うよ。庇護してくれる存在が必要なだけだよ。ただ生命体としての本能に過ぎない。それが証拠に成長した個体になると離れて…
わたしの結婚した人はわたしが好んで読むような本は好まないしよくわからないという。更に突っ込んでいうならあんまり本を読まない。これってかなりのスタンダードのはず、って本もまず読んでいない、みたいだ。 映画を見て後で話をしていても何気なさそうに…
「星の王子さま」を読んだのは中学生か高校生の頃。正直つまらないというかよくわからないというか「ふーん」くらい。それっきり読んでない。今もう一度読み返してみたらまた違った感想をもてるのかな?自信はあんまりない。 ついでに言えば「ライ麦畑で捕ま…
朝。舗道にいっぱい散らばった街路樹の銀杏の葉の黄色に朝日が反射してまぶしくて目を細める。年末の土曜日の朝は少し閑散としてて踏みつけられて傷ついた銀杏の葉の葉脈から冬の匂いが立ち上る。 夕方。あっちの電信柱の続く道をこっちの角度から見るとこん…
すっかり暮れた西の空。金星の2メートルくらい下に糸杉みたいな三日月。あんなにきっちり整列して行儀がいいのねなんて思ってる間になぜだか黒い煙に隠れて見えなくなった。 幸せを手に入れるのは意外に簡単。自分のポケットの中を探ってみてそれからはたと…
朝。 駅のコンコースを出た屋外の広く張り出したテラスにある円形の多目的広場。特定の住まいを持たない不明の人たちがようやく差し始めた暖かな朝日を浴びるため皆一様に東の方向を向いてささやかに幸せそうな顔をして思い思いベンチに座っている。 彼らは…
好きな作家は誰でしょう?そうだなぁ悩むけどうーんレイモンドチャンドラー。言葉の隅々までもさらさらに渇いていてかっこいいから。 まる虫として生きるっていうのは一体どんな感覚なんだろう。思うほど卑屈なものでもないのかな。意外にロケンローな体験か…
星の色は本当は赤や青。物干し竿で突付かれて空から落っことされて無理やりにテレビの横の窓際にあるしけたツリーのてっぺんに飾り付けられてるうちにすっかりしなびて黄色になっちゃっただけ。その証拠に空を見てみて。空にいる時の星はそりゃあもう誇らし…
結婚した年の秋に祖父が、翌年の春には父とお腹の中のまだ水かきが手に残っていそうな生命体の、それぞれの心音がこの世界から消えた。 それから一月位して猫も家を去って行った。いつもはひどく用心深く、周りをよく確認してからでないと決して出てゆかない…
月あかりもない昨夜の空があんなにも明るかったのは雪が降る前触れだったんだ。奇跡的に雪が積もっている。ほんの数ミリだけど粉砂糖みたいに真っ白な雪が窓から見える景色すべてに満遍なくきれいに降り積もっている。汚いものにも綺麗なものにもおかまいな…
クマのプーはすごい哲学者らしい。何とか派の哲学を具現してるクマらしい。「ボクは頭の悪いクマだから」なんていってるところがまたまたすごいらしい。 確かにね。何とか頭よさそうに見せようと汲々としない生き方なんてなかなかできるもんじゃないもんね。…
あの子が手品を見せてくれる 笑いをこらえるのが大変なくらい それはもう見事な手さばきで手品をしてくれる あの子の手品には種がない だって何もかも見えてるもん そんなものはもう種とも言えない あの子は延々と手品をし続ける わたしは延々と手品を見続け…
横断歩道の脇の歩道の隅っこ敷石のめくれたところにエメラルドみたいに緑色の小さなかけらが一個落っこちてた。車のヘッドライトが運良く当たるとちょっとだけきれいに光る。でもちょっとだけ。どこかの子供が落っことしてった白いプラスチックの棒の先に三…
歳末助け合い運動のシーズンなのだ。 両脇をガッチリ「お願いしまーす」の熟年混声合唱団にかためられて昼飯を食いに言ったのだ。行きはよいよい帰りは怖い、ということで帰りはもうこの横断歩道さえ渡りきれば会社だぁ~ってとこで負けました。だってずずず…
冬の天気のいい朝、少しでも暖かい陽だまりを求めてデパートの南東の角にある郵便ポストの前に一切合財財産を詰め込んだぼろぼろのショッピングバックを持っていつもどこからか集合してくる数人の人たち。めいめいデパートの壁に背をもたれかけさせ陽の光を…
『大体が猫の考えてることなんてよくわからない・・・』なんて書いちゃったけど、猫って生き物のそういうクールさとか自由気ままさとか人によっかかってこないイメージっていうのは結構こっちの側の希望めいた、そうであったらいいなというか、何だかそこに…
今日の朝ごはんはチーズとハムのトーストとあと夕べの残りのかぼちゃのスープです。えーとね、チーズとハムがほかほかにのってるパンの真ん中の白いとこはこのまま食べて耳はちぎってかぼちゃスープに浮かせて食べるといいからね。ほらこうしてスープがしみ…
少しずつ冬になってきた。今朝はお当番。黄色い旗を振りかざしてぴよぴよ騒がしいちびっ子たちを安全に横断させるの。一日だけ即席正義の味方参上。 息が白いの。わぁほんと息が白いの。忘れてた。冬の朝って息がこんなに白かったんだ。お腹の中が不完全燃焼…
駅の長いエスカレーターを降りて急いで駐車場へ。今日も遅くなっちゃった急ごう。せこいちっぽけなビルの向こうに見える西の空は店じまい寸前の夕焼け。紺色の混じったオレンジみたいな色。名前のない色。もうすぐ紺色と溶け合ってく。75点くらいかな。息は…
車が左に曲がったからわたしも一緒に左を見るの。建物の向こうかわにまぁるいお月様。ゴルフの打ちっぱなしの背の高いネットのも少し上でぐるりを取り囲んだふかひれみたいな形の雲を銀色の光で縁取ってる。今夜の月はどんな色?やる気のない白んだカルシュ…
この季節の空がやっと来た。高く遠く酸素不足なくらい青の色が薄くて、空想上の動物めいた雲たちがジェットの風にのってものすごいスピードでずっと向こうを流れてく。まだ昼を過ぎてそんなに時間も経ってないのに太陽は西へと西へとやけに比重をかけすぎて…
あの子が鼻風邪を引いて病院に連れて行った。 立体駐車場の屋上が好きだから、空いていてもいつも一番上まで登る。道路をはさんで斜め向かいに病棟の窓が見える。今も誰かがあの窓の中からこの駐車場を見ているのかもしれない。自分のところにお見舞いに来た…
降るなら降ってよ。晴れるなら晴れたらいいじゃん。しみったれた天気にはうんざり。グレーの雲が厚い冬の朝は5千回くらい舌打ちしたって足りないくらい。 呼吸をする。してみて。みんなが呼吸をする。ほら、吸ったら吐く吸ったら吐く。酸素を吸って二酸化炭…
あの夜の猫の顔はまるで菩薩のようで「猫」ってわたしが呼んでもちっとも動かずただじっと目を瞑り前足をくるりと胸の下にしまいこんでちんまりと不思議な波模様が刻まれた岩の上に座り込んでいた。 月明かりなんかあるはずもない霧の夜ぽっかりと白く浮かび…
あのね逆立ちして足の裏から花を咲かせることができたらそれを見せながら大道芸人として側転で世界を旅して回るのもいいかもしれない。なーんてほんとはしないけど。 時々だけどうっかり噛み砕いちゃう。中に天神寝てござる梅干の種。そうして萌芽した微かな…
なんだかとても疲れちゃって9時にはもう寝てしまった。 そしたら案の定夜中に目がさめてどうしても眠れない。 ごろんごろん寝返りを打って目をつぶって羊を数えようかなとか思ったけど そうかあれって英語で数えないとあんまり意味ないんだよな そんなこと考…
朝だ。 朝はいつも潔癖で 決して気まぐれを起こさず 誰か一人だけを贔屓することもなく 白けた慇懃無礼さで すべての人のもとを訪れるので 時々は人を困らせるのかもしれない 別にわたしは困らない。 夜寝て朝妄想するから。 最近あんまり歩かない。 わたし…
昨日の朝出勤途中に見た子猫は今日の朝にはもうだいぶ原形をとどめなくなっていた。すっかり雨にも濡れていたし、何度かはよけ損なった車のタイヤに踏んづけられて、昨日最初に見かけたときのふんわりした体のフォルムはもうなくなっていた。片側二車線の道…
嫌な夢を見た。たくさん見た。目を覚まして枕を裏返したりたたいたりおまじないもしたけど、それでもやっぱり見た。たくさん見すぎたからもうみっつくらいしか思い出せないけど、夢でなきゃ絶対思いつけないくらいへんてこな恐ろしい世界だったことは確か。 …