2022-03-01から1ヶ月間の記事一覧

それくらいの謎

朝起きて1時間くらいしたら、なんだか急に何もかもが嫌になってしまい、ああもう私なんか棒切れかなんかになってしまえばいいのに、いいや、ごまでもいい、ごまの一粒にでもなってすりつぶされてすりごまにでもなってしまえばいいのにと、なんだかめったやた…

かわいそうなハナミズキのために

すっかり枯れ果てていた木の枝に、ぎゅっとつぼんだ新芽がつき、そのうちの一つはあろうことか、もう双葉を開きさも春が来たかのようななりでいる。時が読めない哀れなつぼみなのか、最初のぺんぎんならぬ最初の双葉、誇り高きパイオニアなのか。 いずれにし…

連休前

そうか、生きてたんだ。 車のエンジンを止め、新しいマスクを真ん中でふたつに折りたたんで山折り線をつけている間に、思わずそんな言葉が口を突いて出た。 ただ唐突に、誰のことなのか何の意味かもわからないまま、私の口が動き私の声がそう言った。 最近は…

悪くないの魔法

芋を洗うような声で話しまくる女が今日も芋を洗うような声で話し、わめき、笑っていた。 いったいなんだってあんなにも芋を洗うような声なんだ。 芋を洗うような声のことを、心の中でずっと責めていたら、急にふと申し訳なくなった。 芋を洗うような声は地声…

しゅぱん

マスクなんかもううんざりだ。 そう思いながらブラインドをめくって外を見たら変な鳴き声の鳥が鳴いていた。あまりに変だったので姿を見ようとそのあたりを眺めまわしたけど、見つけられない。どこだどこだと思っている間に、もう声は聞こえなくなっていた。…

できるできるぞ

走って走ってずいぶんと懸命に走って、はっと気づいた時にはもうすでに猫になっていた。推進力を生むために遮二無二前後に振りまくっていた指先には尖った爪が、毛でおおわれた手の甲をひっくり返してみれば、そこには肉球がぺたんとかわいらしく、いや、か…