2008-09-01から1ヶ月間の記事一覧
茶色の蟷螂がおかしな風に片手の鎌を折り曲げて小さな蝶だか何かをむしゃむしゃと食べていた。剪定した樫の枝葉のひとつを70Lのゴミ袋に入れるため持 ち上げた一枝に、食べることにあまりに夢中になっていたのか、それとも元々鈍感なのか、蟷螂は自分の乗っ…
改札を出て左へ曲がったすぐのところに、オレンジの古びた毛足の毛布に包まった、グレーの豊かな髪を持った痩せた初老の男が、何もかもを超越した預言者のような顔つきをして、通路の壁にもたれて座り3メートルほど前にある通路の反対側の窓のあたりをじっ…
幼い頃のあの子の姿をふと思い出したら唐突に哀しくてたまらなくなってしまって咽喉から何かが鼻と目を通ってつーんと空へ抜けていった。空へ抜けていってしまった哀しみを目で追って少し紅く染まりかけた空を見てたら、ああもうあんなに可愛かった小さなあ…
今日は朝からケータイがじゃんじゃらじゃんじゃら鳴りっぱなしで、てっきりアラームかなんか間違えてセットしちゃったのかなと思って、渋々ベッドを抜けてバッグの中からケータイを出してみたら、あの子の学校の連絡網用のメーリングリストから、全く同じ内…
見事に晴れた。そんなに晴れなくったってさ・・・って小石でも蹴りたくなるくらい、見事に晴れあがった。えーっと、それって何かのメッセージですか?たとえば何か重要な政治的な秘密のメッセージとか暗号とか。すこーんと抜け上がる青い空に向かって尋ねて…
今日の朝、あの子はまるで台風をお迎えに行くみたいに西へ向かい行ってしまった。ねぇ、信じられる?台風がやってくるのにわざわざ台風に向かって行っちゃったんだよ、そんなのってあり?延期にしてくれたらいいのに、もっと別の日にしてくれたらいいのに、…
葬式帰り、喪服のままオイル交換に立ち寄った車の販売店で、「お疲れのようですね。お疲れの時には甘いものでも」と帰りに手渡されたジャンボどら焼を、車の後部座席に乗り込むや否や、ポケットに見立てて腹にあてた小さな祭礼用バッグから取り出し、「じゃ…
何度この道を通ったんだろう。何度通ってもこの道沿いの景色はとても綺麗だけど、大抵は運転だから景色なんか、うかうか見てられないし、晴れてる日の海なんかうっかり正々堂々正面から見つめたりなんかしたら、目がくらんでそのまま橋の上からどど~んと海…
屁理屈とかこねようかなと思う。天使が屁理屈こねろこねろってささやくから。でも面倒くさいからやめた。屁理屈とかこねない。 こういうときの無意味な「~とか」の「とか」が好き。馬鹿っぽいところが好き。っていうか好みのタイプの馬鹿っぽさ。 天気がそ…