2007-01-01から1年間の記事一覧

蝶の死骸

もう随分前から、階段の踊場の上のほうにある明り取りのはめ殺しの窓の桟に蝶が死んでいる。灰色の丸い紋様のあるあまり綺麗でない蝶で、最初は蛾なのかと思ったのだけれど、羽を閉じてとまっているので蝶らしい。ある日蝶はどこからか突然やってきて、そう…

違う時間を生きている

子供の一年はとても長く大人の一年はあっという間に過ぎるということを、子供の頃の自分はとても素直に認めることができたのだけれど、大人になった今はそれはちょっと目を瞑りたい事実。こんなじゃもう、はっと気づいた時には年老いて死の床についていそう…

宮沢賢治風に言うなら“まんまろな目”

なんか猫がものすごい急ぎ足にかけてきて、大慌てにわたしの膝に入り込んで座るから、よほどわたしのことが好きなのかなと思ったら、二の腕をむんずと両の前あしでつかまれて、ひどい猫キックと噛み付きをお見舞いされる。相手がしがない猫だけに余計情けな…

ねこ

なんか猫がものすごい急ぎ足にかけてきて、大慌てにわたしの膝に入り込んで座るから、よほどわたしのことが好きなのかなと思ったら、二の腕をむんずと両の前あしでつかまれて、ひどい猫キックと噛み付きをお見舞いされる。相手がしがない猫だけに余計情けな…

わたしあなたたちのお母さんじゃなかったりお母さんだったり

不機嫌。上手に隠せなくてちょっと人に当たったり、うまく隠してぎりぎりセーフな笑顔で乗り切ったり。自分の忙しさにかまけて、それを懸命に喧伝してる人って、たいてい人の忙しさへの想像力が欠如してる。所詮いろんなことを見渡せる余裕がないんだなって…

世界は称賛しない

家族と向き合ってると、というか主にあのこと向き合ってると、パソコンと向き合う時間が減ります。だって一日は24時間しかないし、おまけに最近のわたしは夜更かしなんかしないから。パソコンにばっか向かってる背中をあの子に見せたくないなぁと、そう思い…

捧げます

うわーいうわーいやる気がなーい。とか言ってる場合じゃない。言ってる場合じゃないけど言ってる。言う気はあるけどやる気がない。そこが根本的問題。あっちこっち引っぺがして年末の大掃除しなきゃ、週末恒例のJA野菜買出しツアーへ行かなきゃ、もらったポ…

「心ってとらえどころがないみたい」な、はなし

夜眠る前に必ずあの子はリビングの壁にかけられてる大きな日めくりをびりっと一枚破るのが習慣で、それはなんだか明日への希望に満ちた儀式のようでもあり、ごく当たり前の何気ないことのようでもあり。そうした些細なことにも意味を見出そうとしちゃう小賢…

デイバイデイ

通路に沿った窓はすべてブラインドで閉ざされて、のぞき窓のない暗証キーのついたドアの部屋で平日の毎日を過ごすのだけれど、なんだかまるで金庫の中にでもいるみたいだなと、入室するために暗証キーをぺぽぺぽやりながら思った。そうまでして入室制限をす…

ひとりぼっち

あんまりあの子のことが好きで好きすぎるから、こりゃ何かの呪いだよなきっと、ってこっそり思う。こっそり思うって、思うのはひとりぼっちですることなんだから、別にこっそり思おうが堂々と思おうがどっちだってあんまり変わらない。あんまり変わらないけ…

脅迫に満ちたクリスマス

今年もクリスマスがもうすぐやってくるようなのだけれど、クリスマスがやってくるといっても実際にはクリスマスが赤い長靴をはいて、ドラムを打ち鳴らしながら、らぱぱんぱんらぱぱんぱんと行進してくるようなことはあり得ず、ただただ日々、陽が落ち、星が…

10円はげ

あの子の頭に10円ハゲが2個あった。10円はげってあんまり言わない?んじゃ円形脱毛症。「お母さん、円形がありますよ」って床屋のお兄さんが知恵の輪、暇つぶしにしてたわたしに教えてくれた。「ここ、ほら、ここ。ちょっと長くしておきますね」って、わた…

貧血

このものすごいへろっとした疲労感は貧血のせいだろうか。ここ数日また鉄剤のみ忘れて、ついでにトランシーノものみ忘れて。トランシーノにいたっては2ヶ月くらいたっても一瓶のみ終えられないくらい。プライベートな生活の部分で定期的に何かをきちんとこ…

ナトリウム塩化物泉

ゆらゆら揺れる湯にうつるほの暗い橙の明りのなかで立てた膝も伸ばした腕も眩暈のように揺らぐ。そっと目を瞑りやり過ごす。夜空を見上げれば動いているのが星なのか雲なのかわからないくらいに風がごうごう流れてく。温まりすぎた体を冷したくて、裸のまま…

一見まじめっぽい冗談

いつも飲むのはコーヒーなの、しかもブラックでね、みたいな気取りは80年代の残り香がぷんぷんしてて少し笑ってしまうような気がするので、最近昼飯あとの午後の中だるみ、お眠タイムの14時に、コインを投入しておもむろにピッと人差し指でタッチする自販機…

いつか成敗してやろうと計画中。

猫が一人で、って言うか一匹で、なんだかもんどりうってる。フローリングにかちゃかちゃ爪がうるさい。猫はそこそこ忙しい。大体今日は乳歯が二本抜けた。猫にも乳歯があるなんて、初めて飼うわけでもないんだけど知らなかった。子猫、というよりもう既に中…

猫の事務所

もうあちこち毛だらけ。あんまり毛が抜けないようにしてよね、とかなんとかぶつぶつ猫に小言を言ってたら、結構毛だらけ猫灰だらけの猫灰だらけってなに?って聞かれたから、昔はね猫は今みたいに大事にされてなかったでしょ、でね、夜は寒いから火を落とし…

One of these mornin's You goin' to rise up singin',

冬の朝、目覚めた途端、ああわたし何かをなくしてしまったんだと唐突にそんな気がして、しばらくベッドの中で身じろぎもせずにクローゼットと天井の境目辺りを見ていた。だけどいつまでたっても何をなくしたのかこれっぽちも思い出せなかったし、格別な喪失…

自動車学校

明るく強い照明に照らし出されたコースを、教習車が何台も連なって、くるくるまわって、ところどころでS字にカーブしたり、上から吊る下がったおかしなポールの中にそろそろと恐ろしげな様子でバックをしたり。空と電信柱と一緒になったみたいに大きな銀杏…

猫は主語なんか持たないし

退屈だなと思いながら仕事時々さぼりで一日が暮れる。あんまり心が飢えて退屈な気がしたから机の引き出しに隠したプリッツを牙みたいに2本口にくわえてぽりぽりぽりぽりって食べて笑ってみる。一人の部屋でこっそりプリッツぽりぽり食べてる自分の間抜けな…

退屈の花は死なず

なんだか知らないけど、唐突にぽつねんと退屈になった。退屈になったならなったで一人で退屈してればいいじゃんと思わないでもないのだけれど、何となく退屈になったと言ってみたい気がしたので言ってみた。言ってみたい時は言ってみればいい。言わなきゃよ…

「お茶欲しい?」

あの子は卵アレルギーなのだけれど、もう11歳になったので小児科医の指導の下、卵を食べる練習をしています。卵を食べる練習とはどういうものかという と、まず一日腹筋30回。これは筋肉が発達してないと内臓が丈夫にならないからだそうで、少しずつ自分の…

おまけみたいに幸せにした

買い物を終えて外へ出たら雨上がりの濡れたアスファルトにお店の電気看板の光がうつってた。綺麗に舗装されて、でこぼこったらほんの少ししかないから水溜りもほんの少し、うつる光もほんの少し、お財布の中身もほんの少し。あれ買ってこれ買ってって、あの…

簡単じゃない

結局のところ、メタボの親父といえば、あの子が生まれたあのときにたった一度っきり、いいことを言っただけで、その後は決していいことなど言うこともなく、ただひたすら着々とメタボ化をはかり現在に至り、あろうことか今日の朝は免許証と定期券の入ったパ…

引力を呪う

すごく迷信深くて、ひどくデリケートで神経質なんだけど、ハーフ&ハーフで無神経でぼんやりしてたりするからちょっと自分でも持て余す。感情の紆余曲折がねじれ捻れてねじれすぎて平坦になってしまうのか、それとも感情の帯のどこかに落とし穴かなにかが掘…

猫飼いも犬飼いも同じ

猫飼いも犬飼いも同じなのだと思うのだけれど、人は誰でも拒否される心配もなく、誰に遠慮するでもなく、安心して思うがまま存分に愛情を注ぐことのできる対象が必要なのに違いないのだよ。多分ね。それだからこそ、人は猫を飼い犬を飼いフェレットを飼い、…

猫飼いにも思想が必要

猫を貰うの貰わないのケージを買うの買わないので今日いちにちは慌しく暮れ、夕食ったらインスタントの塩ラーメン小松菜入りと椎茸のから揚げだけ。置き去りにされた箱に入ったままのニャンとも清潔トイレと組み立て途中のキャットタワーが物寂しげに暗闇の…

そんなには遠くへ行かない

賢い猫のようにくるりと宙返りをして柔らかく着地をしたらぐるりの世界がひとめぐりして、それからどんでん返しに変わるかも。跳び箱でも飛ぶように助走をつけて試してみてもそんなには遠くへ行かない、かもね。試さない。一年ぶりの銀杏の翡翠の色がどきり…

あのさぁ何にもわかってないのかもしれないけど

続きさらにまだ続くけどのつづきです あの子が退院してきた日の夜写した一枚の写真を見るたびに今も思い出す。 「ねぇほら見て、こんなだよこんなに小さい。5本の指全部合わせても、僕の人差し指の第一関節分しかないよ」あの子を抱っこしながら、嬉しそう…

結局、文字にしろ言葉にしろ

結局、文字にしろ言葉にしろ、他人に伝えることのできる何らかの媒体に自分の想いを変換したり押し込めたりする作業の大半は、その過程に意味があるのだし、10のうち9.7くらいまでは自分自身のためにしていることなんだろう。簡単に人に話せる過去の出来事…